素晴らしい楽しい本である。
「ワイルド・ワンズ」のリーダー 加瀬邦彦さんの自伝
抱腹絶倒である。昭和歌謡 GS エレキインスト好きにはバイブルになる本。
そして全く知られて無かった真実も沢山記述されている。
加山雄三さんの妹さんと交際していた関係で
加山氏 上原謙さんの自宅に出入りするようになり、
その兄さんが俳優になり歌手になったと言う事。
そして、加瀬さんが友人から貰ったベンチャーズのLP
「カラフル・ベンチャーズ」を聞いてギターに興味を持ち
無理やり加山さんからギターを教わる。
ホリプロの「キャノンボール」と言うインストバンドのメンバーとして
プロデビュー。
しかし、同僚のかまやつひろしさんと気があい。
二人で岩原に2泊でスキーに出かけ、キャノンボールが
ステージに出れなかった事の詫びを入れるために
堀社長{現・会長}はキャノンボールを解散させる。
解雇されると思った二人は何故か「田辺昭知とスパイダース」に移籍させられる。
スパイダース演奏中に寺内タケシ氏から強引にスカウトをされ
演奏途中に半ば脱走する形でホリプロに無断でブルージーンズ 渡辺プロに移籍。
ブルージーンズ時代に作曲した「ユア・ベイビー」がヒット。
この曲にインスパイアされ かまやつひろし 井上忠夫も作曲を始める。
ビートルズ登場 加瀬氏は一気にインストグループから
歌って作曲もするビートルズスタイルに感化され始める。
ビートルズの来日公演にブルージーンズが前座で参加。
当初楽屋で握手も出来 コンサートも聞けると思っていたが
ビートルズ出演時 楽屋に鍵をかけ コンサート鑑賞も禁止と
ナベプロからの説明を聞き、ビートルズを見れないのなら
ブルージーンズを脱退する事を決める。
その直後、寺内タケシが「ナベプロに居たら好きな音楽はできない
俺は今、寺内企画と言う会社を作っている お前らも付いてくるか
一人ずつ答えろと言われ 加瀬氏だけが辞めると告げると
寺内さんが激怒。
翌日、ナベプロから「寺内さんは結核になり、療養のため
渡辺プロもブルージーンズも辞めるそうです。
今日から加瀬君がリーダーです」と言われ困惑する。
寺内さんの独立計画は失敗と言うのが真相。
どうやら加瀬氏の居ないブルージーンズに未練は無かったようだ。
ブルージーンズを脱退 東芝レコードから貰ったチケットで
ビートルズの武道館公演を鑑賞し自分のグループを作る夢が膨らむ。
渡辺プロは加瀬氏に作曲家として残る様通達するが
バンドを作る計画として「平凡パンチ」にメンバー募集の
広告を載せ、「ヤマハ」から新品の ギター ドラム オルガン一式を
宣伝の意味も含め寄付してもらう。
実はワイルド・ワンズのメンバーは全て、ヤマハ関係者の
推薦 ファンの情報から集められた情報で
加瀬さんがスカウトしたもので、平凡パンチの募集で
採用になった人は一人も居ない。
ベースの人間が一人採用になったが、メンバーとの折り合いが
悪く、ギター志望の島さんを無理やりベースに転向させ
参加させた。
合宿を経て、東芝音楽工業よりデビュー。
当初、ブルジン時代の「ユア・ベイビー」をA面にする
東芝側に抗議する形で「想い出の渚」をごり押しでA面にさせた
結果大ヒット。
タイガースの「シー・シー・シー」は寝ないで5時まで飲んでいた
朝に、タイガースのマネージャーから「次の曲がイマイチなので
加瀬さんに作ってもらいたい」と急遽作り、安井かずみさんが
メロディー聞いて即興で作詞し、その日のお昼にレコーディング。
当時のポリドールレコードのスタジオは古い木造で
音漏れが酷く、外に居たファンはメンバーがスタジオを去るときには
♪ 愛のピエロが ♪ と合唱し、沢田のジュリーが
「加瀬さん これ大ヒット間違いなしだね」と言った通り
初登場一位 その後7週に渡り首位を独走。
加瀬さんの母親はお好み焼き屋を営んでいて
関西風のその味で、タイガースのメンバーが良く食べに来た。
伊藤ゆかりも仕事が終わると店の手伝いをしに来てくれて
お客に「君 伊藤ゆかりに似ているね」「良く言われるんです」と
お客に内緒で頻繁に手伝っていたと言う。
音に厚みを付けたいと思っていた時、ドラムの上田さんの近所の
16歳の楽器は何でもこなせるチャッピー事、渡辺茂樹を紹介され
「愛するアニタ」のオルガンで参加。
その後「バラの恋人」のボーカルも担当 7週1位の大ヒット。
チャッピーの加入はワンズの音の拡がり、ファン層の拡大に
繋がった が女子大生のファンは減ったらしい。
その「愛するアニタ」は当初、タイガースが録音したが
結果的にお蔵入り。先輩の内田裕也が当時率いていた
「フラワーズ」で録音する事になり、内田も喜んでいたが
結果ナベプロの意向でワンズがレコーディングする事になり
タイガースまでナベプロに取られた内田氏はかなり激怒したらしい。
とにかく音楽好きなら「唸ってしまう」エピソードと真実が満載。
温かみのある加瀬さんの文章が素晴らしい。
最後にスパイダースの「ノーノー・ボーイ」
当初、作詞の田辺昭知さんは加瀬さんに作曲してもらいたい
意向だったが、加瀬さんが「まだそんなに作曲できる能力が無い
かまやつさんが適任では」とかまやつさんを推薦。
この曲の完成が後のかまやつさんの作曲活動の原点ともなった。